古前 極さん
一級建築士。ご自身と、同じく建築士でいらっしゃる奥様の2人家族。元々ご実家があった土地に新築を建て、アトリエ兼ご自宅として2006年竣工した。夫婦でアーキシップ古前建築設計事務所を営み始めて今年で15年目。
明智光秀によって丹波統治の拠点として築城されたと言われる亀山城。紺屋町、旅籠町、内丸町、与力町などなどいかにも城下町ならではの街並みの一角にある「呉服町通り」に面した和モダンな家が古前邸だ。
玄関を入ると靴のまま入れるオープンな打ち合わせスペースがあり、2階は仕事場兼図書室になっている。
「杉の木の温かみを生かしつつ、オトナの洗練された雰囲気にするため床にはタイルを使用したり、木の割合を調整しながら設計しています。“光と風”がコンセプトのため、全てをオープンスペースにしたのですが、冬は深夜電力を使用した土間暖房があるのであったかですよ。最近は電気代が高くなって大変ですが・・・(笑)」と古前さん。
「意識して『和モダンにしよう!』とは思っていないのですが、城下町に住んでいるせいかベースに和が染みついているというか、私たちが設計する作品はそんな雰囲気になります(笑)。最近の作品では意識的に和モダンから離れることもあります」と奥様。
敷地の巾が狭く奥行きが長いので、“京町屋の現在版にしたい”という当初のイメージが和モダンにさせている一因かも知れない。
奥の居住空間へ進むと、漆黒の造作家具とこっくりとした色合いの床材のコントラストがとても落ち着く。遠くの方からジャズが聞こえてくるが、インターネットラジオをいつもつけっぱなしにしているらしい。
「床材はカリンです。家具にも使われるくらい寸法精度が良いですし、リボス仕上げのナチュラルな素材なので、アトピーの方にも優しいですね。打ち合わせスペースは壁、床タイルとも白い感じなので、居住空間との区切りの意味で調子を変えた色づかいにしました」と古前さん。
ダイニングの先には紅枝垂・イロハモミジ・山もみじ・山法師と、新緑&紅葉が家で楽しめる中庭がある。
「ニーチェアに座りながら読書をしているのが至福の時です。夏でもわりと涼しいんですよ」と奥様。
そんな古前邸の2階には、全面ガラス張りのホテルライクな洗面&バスルームがある。
「洗面水栓は直感的に操作できるデザインで、とても使い心地が良いですね。さすがスタルクのデザインだと思います」と古前さん。
バスルームには木の枠の小窓があり、夜になるとお月さまが見えるのだとか。
「ガラスとタイルだけだと、冷たい印象になってしまいがちなので、木のほっこりしたテイストを少し入れました。バスタブにゆったりと浸かりながらお月さまを見るのは最高なんですよ。設備に関してはいろんなメーカーのカタログを全部見て、ベストなものを選ぶようにしています。今回はホテルライクにしたかったので、世界の一流ホテルでの採用実績が多いハンスグローエにしました。シャワーはハンドシャワーしか使っていないのですが、今度設計する家ではオーバーヘッドシャワーを採用してみたいよね」とだんな様ににっこりほほえむ奥様だった。